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このギターはこのボロボロの顔つきに惹かれていわゆる衝動買いの1本です。
トップはピッキングで穴が空くほど弾き込まれており、こういった使いこまれたギター、格好いいと思います。
購入時点では非常に状態は悪く、ネックが元起きを起こしており、サドル、ブリッジ、指板まで削って弦高調整されていました。
また、ヘッド付近でのネック折れ修理の形跡もあり、そのためヘッド裏は木目を潰したような塗装がされており、ヘッドのつき板は光沢塗装になっています。
しかし、ネックの裏は下地塗装まで剥がれるほどまで使い込まれていたり、フレットはまだ交換されたばかりで前オーナーが手放す直前まで使い込んでいたことが伺えます。
元々、外観に惚れて購入したギターでしたが、
肝心の音もサドル高がベタベタに低いにも関わらず結構鳴る個体であったため、思い切って購入価格の3倍の費用をかけて調整しました。
具体的な調整はネックのアライメントを調整し、ネックの元起きを補正しました。
それに伴いサドルを牛骨で新調し削られたブリッジの質量を補正するためとブリッジプレートの痛みを修復する目的でブリッジプレートの裏から薄いローズウッドの板を貼りました。
調整の結果、サドルにかかるテンションが適正にな、張りがあり中音域に特徴のある見事なSヤイリサウンドがよみがえりました。
この楽器はスプルース単板のトップにローズウッドのサイドバックという構成となっていますが、サイドは割れ止めもなく合板であることがすぐにわかりますが、
バックは表裏の木目が合っているので単板かもしれません。
但し、この時代の楽器には表裏の木目を合わせた合板も存在するのではっきりとはわかりません。
一見スタイル28に見えるこのギターですが、指板、ブリッジがローズウッドのためスタイル21となります。
また、ブレーシングはスキャロップされていないストレートのものが採用されていますが、マーチンに比べて随分細くて高さも低いブレーシングです。
そのせいか、いわゆるスタイル28に比べて音も軽く、若干スタイル18のようなテイストも加わったような感じです。
外観の割にストロークよりもフィンガーピッキングでその良さが発揮される楽器のような気がします。
さて、この楽器ですが、型番がありません。
ネックブロックには「344 KK」という刻印が確認できます。
色々と調べた結果この個体はSヤイリがいわゆる量産体制に移る前に、いわゆる請負生産制をとっていた時代のものです。
いわゆる量産ラインでの分業によるギターの生産ではなく、
1人の職人がギター製作の最初から最後までを1人で担当して作り上げた時代のものです。
そして「KK」とはその職人さんのイニシャルらしいのです。
Sヤイリのシリアルは71年より4桁となり、一番左の桁が西暦の1の位を表します。
この楽器のように3桁のシリアルはそれ以前の生産ということになり、Sヤイリとして344本目の楽器です。
この楽器はまだ製品のラインナップが決まっていなかった時代のいわゆる本当の意味での「手工品」であり、
資料的価値の非常に高い個体であることがわかります。
購入時についていたペグがまた非常に貴重なもので70年頃のヤマハの高級機種にだけ使われていた「Yペグ」というものです。
このペグ、ヤマハのFG−1500、FG−2000のシリアル3桁台以前のものだけに使われていたもので、非常に珍しいものらしいのです。
このペグがオリジナルなのか、前オーナーによって交換されたものなのかは不明です。
しかし、現在は私の好みでグローバー102Cに交換されています。
このギター、最近はいつも出しっぱなしで一番手にすることが多く、自作ピエゾの実験台にもなっている楽器です。
現在は自作ピエゾが3つ搭載されており、いつでも実戦で使えるようになっています。
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